日本人は古代より独特の結髪文化を発展させてきました。大陸文化の影響を受けた飛鳥・奈良時代、長く垂らした豊かな黒髪を愛した平安時代から室町時代、技巧を凝らして髪を結い上げるようになった江戸時代。時代が下るにつれてその種類は数百にのぼり、髪型を見ればその人の職業や身分、年齢、未婚か既婚かなどがわかるようになりました。本書は、古墳時代から現代までの日本の髪型の歴史を、時代考証をもとに再現された実際の結髪姿とともに解説します。また、島原太夫や舞妓といった花街の女性たち、角界の力士など、現在も伝統的な日本髪を結って暮らす人々と、その結髪文化を支える結髪師の技を、結髪プロセスやインタビューを交えて紹介し、いまに生きる日本髪の実像に迫ります。このほか日本髪の櫛や髪飾り、家庭でも結える新日本髪も紹介。主な内容は次の通りです。1章花街の髪型と結い方〈舞妓〉店出し/舞妓の髪型/割しのぶとその結い方/芸妓・舞妓に聞く日本髪と暮し/節分のおばけ/花かんざし/金竹堂2章花街の髪型と結い方〈島原太夫〉島原太夫の髪型/お初とその結い方/島原太夫―花街の「心」を受継ぐ/島原太夫の櫛かんざし/ありし日の島原太夫道中/花街の髪を結う―山中美容室3章櫛まつりに見る日本髪の変遷櫛まつり《古墳時代~奈良時代古代の結髪と大陸文化》櫛まつりに見る髪型(以下同)古墳時代~奈良時代/いにしえを伝える大島あんこの島田髷《平安時代~室町時代垂髪の時代》平安時代~室町時代/古代の髪飾り《安土桃山時代~江戸時代初期結髪の開花》安土桃山時代~江戸時代初期《江戸時代中期髱の発達》江戸時代中期/春信風島田とその結い方/鼈甲の髪飾り/磯貝べっ甲専門店《江戸時代中期燈籠鬢の流行》江戸時代中期(続き)/燈籠鬢丸髷とその結い方/江戸のスタイルブック『当世かもじ雛形』《江戸時代後期宮廷女官の結髪》江戸時代後期/葵髱下げ上げとその結い方/江戸時代後期(続き)/江戸のスタイルブック『女子愛敬都風俗化粧伝』/百花繚乱の髪飾り/江戸の人々を描くアニメーションの世界《明治時代~大正時代結髪の近代》明治時代~大正時代/移りゆく姿―高畠華宵/花嫁の髪型/花嫁の被り物/花嫁かんざし/昭和の花嫁/風俗史家・吉川観方/日本髪の美を次代に伝える有職美容師/つげ櫛/十三や4章新日本髪自分で結える新日本髪/新日本髪の結い方/大正・昭和の櫛かんざし/中原淳一と新日本髪/中原淳一考案花の髪・はつ春の髪の結い方/洋髪と新日本髪ほか『作者介紹』田中 圭子(タナカ ケイコ) 1977年生まれ。学術博士。ロンドン大学SOAS大学院修了、立命館大学大学院博士課程を満期退学。カリフォルニアのクラーク日本美術文化研究センター、東京芸術大学大学美術館に学芸員として勤務。現在、東京都教育庁文化財調査担当学芸員、京都造形芸術大学アートプロデュース学科講師。専門は近代日本美術史。日本美術における女性表象を研究する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)